美術に出会う前の美術
岩崎 清/日本ブルーノ・ムナーリ研究会 代表
ブルーノ・ムナーリ/芸術家・デザイナー・教育者
(Bruno Munari 1907-1998)

 

プリント生地『規則と偶然』(il regola e il caso)が生まれるまで
-美育文化ポケット48号 番外編-

 

 1981年、ムナーリは、繊維メーカーのアッシア・ディ・ブリオスコ社から招かれて、生地のプリントデザインをしてほしいという依頼をうけました。

 その打ち合わせの席で、ムナーリは、いつものように何気なく、いとも軽々と、手元に置いた厚紙にマーカーで縦の線を数本デッサンしました。そして水をもらい、まだ生乾きの線に無意識的に水滴を垂らしたのです。

 線の上に落ちた水滴は、線をにじませ、元の線は「台無し」になってしまいました。しかし、描かれた規則的な線と偶然の水滴から生まれたデザインに、単純なものから新しいモノを生みだすムナーリの発想を見た人は驚嘆したといわれています。

 こうして、「雨に濡れたように装飾された」プリント生地のアイデアが生まれました。その後、イタリアのテキスタイル作家のエットーレ・ヴィラとの共同制作により、さまざまなプリント生地がつくられることになりました。

 この、規則に与えた偶然の水滴を「奇跡の雨」と呼んだ人がいるそうです。

 (アッシア・デイ・プリオスコ社の資料より)


▲『規則と偶然』(1981)

 

写真提供/日本ブルーノ・ムナーリ研究会

 

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