美育文化ポケット 第39号 発刊しました。

第39号 2023 Autumn

目次 contents


1 世界に目をひらく 長谷川浩己

2 pocket meeting in kyoto
『遊誘財』から見えてくる世界
―環境に誘われつくり出すこどもたち―
佐々木 晃さん(鳴門教育大学大学院)

8 practice 実践ポケット【幼稚園】遊誘財編
遊誘財に刺激されて
「おもわず表現したくなる」を大切に

10 pocket cafe
ポケットカフェから生まれた問い

12 curriculum design
カリキュラム・デザイン27
特集アート×
communication
槇 英子+馬場千晶+秋山道広

21 curriculum design こどもと先生のおどうぐばこ

22 biiku-navi report 美育NAVI訪問レポート34
こどもが気づく、試す、考える
なら歴史芸術文化村
「幼児向けアートプログラム」
なら歴史芸術文化村(奈良県天理市)
ナビゲーター:大橋 功 和泉 誠

29 art in life
なんだかうれしそうなこどものつぶやき 秋山道広

30 連載 Nature Arts in LIFE⑪
畑という保育室 磯部錦司

32 連載 アート in SPACE⑭
世田谷代田 仁慈保幼園(東京都) 渡邉裕樹

34 連載 こどもなーとのアトリエリスタだより③
心が動いた瞬間 
小濱いづみ 近藤明葉 和泉 誠  

36 practice 実践ポケット【保育園】
「一番好きなところ」が教えてくれること 鈴木まひろ

38【 小学校】
おひさまでにこにこ~つゆをふきとばすほうほうって?~
城野知佐

40 exploration in to the art of infants
連載 幼児造形の森(23)
嗅覚教具(その1) 匂いの識別とイメージ 水島尚喜

41 beautiful and pleasant things for children and us
連載 うつくしいこと たのしいこと⑦
「“むすぶ”こと」 佐藤賢司

42 drawing&painting こどもの絵を聴く

42 【幼児の部】照沼晃子 43 【小学生の部】 服部真也

44 Q&A 連載 こどもが育つ造形Q&A
新関伸也+北川智久
裏表紙 僕がみつけた、アートに現れる娘の世界③
「絵から風景、そして物語へ」 鈴木 純

 

ポケットミーティング in 京都 2023.7.1 at 龍谷大学・深草キャンパス

『遊誘財』から見えてくる世界
─環境に誘われつくり出すこどもたち─
佐々木 晃さん

ささき あきら/鳴門教育大学大学院 教授

1964年生まれ。平成元年4月から鳴門教育大学附属幼稚園に関わり始め、 途中何度か教育現場と幼稚園を行き来しながら、平成26年4月から令和4年3月まで同幼稚園園長を務める。 平成30年4月より鳴門教育大学教育実践教授(併任)。学生への教育、現場の保育者の実践的な養成をはじめ、長期間にわたって保育現場で積み重ねた遊誘財の研究を、保育・幼児教育の分野に広く働きかけている。 文部科学省「幼児教育の実践の質向上に関する検討会」委員 兵庫県幼児教育連携促進協議会副委員長 一般社団法人日本保育学会理事 課題研究委員会委員長 徳島県保育・幼児教育スーパーバイザー  著書/『0~5歳児の非認知的能力』(単著)『役立つ! 書ける! 5歳児の指導計画』(共著)/チャイルド本社 など。
『遊誘財・子ども・保育者鳴門教育大学附属幼稚園の環境をめぐる保育実践の軌跡』佐々木宏子・佐々木晃共著/郁洋舎 鳴門教育大学附属幼稚園の保育実践をまとめた一冊

こどもを遊びに誘う魅力ある環境「遊誘財」

「遊ゆう誘ゆう財ざい」という言葉をご存じでしょうか。
今回のポケットミーティングは、こどもたちの保育・教育環境について、新たな視点、「遊誘財」の側面から眺めていきます。
佐々木晃先生の長年にわたる研究と実践から、「遊誘財」の意味と背景を考えましょう。講演の中の実践紹介は「実践ポケット」(P8−9)で。
会場とオンラインの合同参加で開催された「ポケットカフェ」(P10−11)、そして城野知佐先生の小学校での豊かな実践(P38−39)も、あわせてお読みください。

「遊誘財」とは、こどもたちを遊びに誘うもの

 私は鳴門教育大学附属幼稚園の保育の現場で約30年を過ごし、昨年3 月に園長を卒園して、今は大学で学生たちの指導にあたっています。
 長年こどもたちとともに過ごす中で、こどもたちが遊びに浸れる環境、あるいは遊びに誘われる魅力ある環境について考え続け、それらを「こどもたちを遊びに誘うたから(財)」として「遊誘財」と名づけ、研究を進めてきました。
 遊誘財は、教材とはちょっとニュアンスが違います。教材とは、誰がやっても同じ結果になり、目的に対して最短距離で成果を収めることができるもの。例えば理科の実験で、過酸化水素水に二酸化マンガンを加えると、誰がやっても酸素が発生しますね。このとき、過酸化水素水や二酸化マンガンなどは教材です。
 ですが、保育で出会う環境においては、人生がそうであるように、いろいろ脇道にそれたり、道草をしたり、時には道に迷ったりしながら、さまざまな楽しみや経験を見つけていくことが大事なこと。ですから、教材と呼ばずに、あえて遊誘財という言葉を使っています。

保育を書いて記録し、再度捉え直して、内面を読み取る

 遊誘財について、私たち鳴門教育大学附属幼稚園が大事にしているのは、 こどもたちが活動に誘われている様子を「きちんと見る」ということです。見たこと、行ったことを事例またはエピソード記録として書いて記録し、こどもの行動を再度捉え直して、内面を読み取るトレーニングをしています。これはこどもたちの援助者である私たちにとって、とても必要なことだと思っています。
 それでは2つの事例を紹介します。

…続きは本誌で


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