美術に出会う前の美術
岩崎 清/日本ブルーノ・ムナーリ研究会 代表
ブルーノ・ムナーリ/芸術家・デザイナー・教育者
(Bruno Munari 1907-1998)
ムナーリの『折りたためる彫刻』と『旅行のための彫刻』
-美育文化ポケット46号 番外編-
蝶番でつなぎ合わせた2枚の金属板は、適切な角度で曲げて自立させると《彫刻》になることは、美育文化ポケット46号の誌面ですでに述べました。
では、こんなことを考えてみましょう。A4サイズの紙は、そのままでは平らで、空間性がありません。しかし、この紙を適切な角度に折り曲げまげて、自立させれば、平らな紙は空間性を帯びることになります。
こんなふうにして、ムナーリは、紙の彫刻を考えました。彼の想像力は際限なく飛翔して、旅先に持参する『旅行のための彫刻』を生み出すことになります。
▲『旅行のための彫刻』
▲『折りたたみのできる彫刻』
ムナーリは、こんなことを言っています。「旅の宿屋は、どんなクオリティであれ画一的なもので、風情がない。そこで、旅行カバンから携帯していた『紙の彫刻』をおもむろに取り出して、部屋のデスクやテレビの上に置くと、ホテルの変哲もないたたずまいが詩的な空間に変わるだろう」と。
ムナーリの卓抜なアイデアから生まれた一片の紙の彫刻が、均一的な日常生活に詩情を添えてくれるのです。
写真提供/日本ブルーノ・ムナーリ研究会
1回目 自然体験からアートへの第一歩 -美育文化ポケット42号 番外編- はこちら
2回目 遊具―遊びながら造形的な感性を培う誘発的道具 -美育文化ポケット43号 番外編- はこちら