
美術に出会う前の美術
岩崎 清/日本ブルーノ・ムナーリ研究会 代表
ブルーノ・ムナーリ/芸術家・デザイナー・教育者
(Bruno Munari 1907-1998)
ムナーリによって見いだされた石たち
-美育文化ポケット50号 番外編-
美育文化ポケット50号では、ムナーリの絵本『遠くから見たら島だった』を取り上げて、《小石》と《わたしたち大人》との関係を話題にしました。
ムナーリは、『芸術としてのデザイン』(増補板、1972)で、初版(1966)の『子どもの本』に対して、大幅に筆を加えました。増補した部分では、こどもの創造性を育むための美術教育論が語られていますが、後半の部分で、石を題材にこどもの表現力をいかに引き出すか、その見事な誘導術が披露されています。
「………岩だらけの海岸に、一人または複数のこどもたちがいると想像してみてください。砂遊びもできないし、お城も穴も作れない。こどもは一体何ができるだろう? 岩を観察してみよう。不思議な岩を探そう。白い模様のある岩、色々なものを連想させる岩、円形や直線状の模様のある岩、木の枝のような模様がたくさんある岩など。これらの枝の後ろに鳥を描くだけで、岩は魔法のような存在に変わる。小石の浜辺には、他の小石と混ざって、普通の石のように見えるものもある。しかし、よく観察すると、石ではなく、まるで山や遠くの島々のように見えるのだ。岩の露頭、崖、建築物、城、道など、細部まで描き込まれた石たち。エルバ島で見つかったこの特別な石もそうだ。長さはわずか7センチだが、マリオ・デ・ビアージがこのように撮影すると、まるで大きな島のように見え、もはや石ではない。………」(池上静ニ訳)
ここで紹介する《石》は、ムナーリが日本で制作したものです。1985年11月に、こどもの城(東京・渋谷区にあった国立総合児童センター。2015年に閉館)で「ブルーノ・ムナーリ展」が開催され、展覧会のオープニングに合わせてブルーノ・ムナーリが来日しました。ある日、ムナーリは、どこかの河原で小石を拾ってきてくれないか、と言いました。スタッフがさっそく多摩川に出かけ、いくつか持って帰ってきました。私たちの目の前で、ムナーリはそのうちの2つの小石を目覚めさせました。それが、以下の作品です。


絵本『遠くから見たら島だった』には、わたしたちの固定的な見方に新鮮な感性を吹き込んでくれるような画像が満載です。そのうちから、2点紹介します。それ以外は、ぜひ絵本を手に取って読んでみてください。


写真提供/日本ブルーノ・ムナーリ研究会
1回目 自然体験からアートへの第一歩 -美育文化ポケット42号 番外編- はこちら
2回目 遊具―遊びながら造形的な感性を培う誘発的道具 -美育文化ポケット43号 番外編- はこちら
3回目 ムナーリのワークショップとは? -美育文化ポケット44号 番外編- はこちら
4回目 ムナーリの絵本『たんじょうびのおくりもの』 -美育文化ポケット45号 番外編- はこちら
5回目 ムナーリの『折りたためる彫刻』と『旅行のための彫刻』 -美育文化ポケット46号 番外編- はこちら
6回目 ムナーリが自然から見いだした繰り返しのアート -美育文化ポケット47号 番外編- はこちら
7回目 プリント生地『規則と偶然』(il regola e il caso)が生まれるまで -美育文化ポケット48号 番外編- はこちら
