美育文化ポケット 第44号 発刊しました。
第44号 2024 WINTER
目次 contents
1 まわる・まざる・まなぶ
めくる・めぐる・めくるめく 仙田 満
2 biiku-navi report 美育NAVI訪問レポート38
「アート」「造形」「表現」を語らない
そこにあるこどもの姿から
見えるもの
山形大学附属幼稚園(山形県)
ナビゲーター:椎橋げんき
10 curriculum design
カリキュラム・デザイン32
特集冬をあそぶ
――自己発揮と協働
槇 英子+馬場千晶+秋山道広
18 curriculum design
こどもと先生のおどうぐばこ
19 自分の中の「こども」を取り戻す研修レシピ
20 pocket interview
森岡督行さん(森岡書店 店主)
27 art in life
はじめの一歩 大橋 功
28 連載 Arts in LIFE④
地球まるごと 磯部錦司
30 連載 アート in SPACE⑱
筑波大学附属小学校(東京都) 渡邉裕樹
32 連載 こどもなーとのクロストーク「アート×保育」④
楽しいからやってみたくなる
砂守頼子 船越さやか 和泉 誠
34 practice 実践ポケット【保育園】
土って不思議 ためしてみよう! 岡 恵
36 【こども園】
作って、遊ぶ。そこから広がる“工事ごっこ”
田澤里喜 石田貴行
38 【小学校】
ぴんちゃんがわくわくする
おきにいりのばしょ 大塚智大
40 before art
連載 美術に出会う前の美術③
ムナーリのワークショップとは? 岩崎 清
41 beautiful and pleasant things for children and us
連載 うつくしいこと たのしいこと⑫
「みたてること」 佐藤賢司
42 drawing&painting こどもの絵を聴く
42 【幼児の部】吉川暢子 43 【小学生の部】 田中明美
44 Q&A 連載 こどもが育つ造形Q&A
黄瀬重義+林 耕史
裏表紙 僕がみつけた、アートに現れる娘の世界⑧
「電線のまち」 鈴木 純
「アート」「造形」「表現」を語らない
そこにあるこどもの姿から見えるもの
biiku-navi report
美育NAVI 訪問レポート38
山形大学附属幼稚園 山形県山形市
今回のナビゲーター 椎橋げんき(白百合女子大学)
美術・造形教育においてよく言われる「こどもの遊びのプロセスが大切」、「表現を受け止める」といったフレーズ。ところが、そう言いながらも、私たち大人は、こどもが「描いたり作ったりすること」や「できあがった作品」に安心感を得て、こどもの姿を語ってはいないだろうか――。
今回、山形大学附属幼稚園を訪ねて、そのことに気づかされました。
保育で何を紡いでいくべきか、山形大学附属幼稚園元教諭の倉岡寿幸先生や現役保育者のこどもの育ちを喜ぶ日常の景色を紹介します。
担任は小学校教諭、「遊び」への戸惑い
山形大学附属幼稚園は、附属幼稚園の専属教諭が保育に携わるのではなく、県内の公立小学校との人事交流により職員が配属されます。そして、幼稚園教諭免許を保有する小学校教諭が担任をし、大学が採用している職員は副担任(非常勤)として勤務しています。
現役の小学校教諭が保育を行う──。そこで問われる「遊び」への戸惑いは、とてもまっすぐで純粋なものでした。今回、こどもと「遊び」込む感覚を陶冶していくことから起こる小学校教諭の思いに触れながら、保育現場で「遊び」を当たり前として語ることができる保育者の視点の豊かさと行き来し、こどもの遊びを改めて感じることができました。
溶け込み、焚きつけ、調和する。こどもの「遊び」の要石
園の要覧にある保育日程によると、午前中は「自ら選んだ活動の時間」。園庭を選んだこどもたちは、あちこち移動しながら遊ぶ子もいれば、園庭のまんなかでずっと1人で遊んでいる子もいます。保育者は、こども一人ひとりの遊びの邪魔をせず、ちょうどよい加減で見守りながら、時には一緒にのめり込んで遊びます。そのやり取りを通して、こどもは今興味があること、楽しんでいること、そして自分自身を受け取ってもらえていると実感するのでしょう。この文化を支え、更新し続けている背景に
は、長年園に勤める副担任の保育者の存在があります。
「 あまりにも溶け込んでいて、先生を探すのが本当に大変」というくらい、こどもも保育者も遊び込む時間。そこからはたくさんのこどもの生活音、こどもの声が聞こえます。そして、大人の声はほとんど聞こえてきませんでした。
…続きは本誌で
冬をあそぶ―――自己発揮と協働
WINTER 2024
curriculum design
カリキュラム・デザイン㉜
カリキュラムのデザインは、過去から未来を見通す大人の思いと今をつくり続けるこどもたちの思いが編まれていくものです。
こども自身の育ちたい衝動に応じ、明日をつくり出す力になっているかを絶えず振り返り、更新し続けることが大切です。
「こうしたら」と「こうしたい」の対話から生まれる「これから」のアートカリキュラムを一緒にデザインしていきましょう。
こどもたちは、いつ冬の訪れを感じるのでしょう。冷たい風に身震いするとき? 葉を落とした木々を見上げて空の広さに気づくとき? それとも大人に厚着をさせられたとき?
分厚い服はなんだか不自由。こどもたちは自分たちでぬくもる術を持っています。それはイメージする力。例えば、北風は身を寄せ合ってごらんと吹き荒れて、木々は芽吹きのパワーを充電中。そんな見方や感じ方が冬景色を色鮮やかに変えていきます。そのとき、イメージにまとわせる形や色の衣が豊かにあり、自由に選ぶことができれば、心の熱源となる「熱中」が生まれます。
そんな冬こそ、春・夏・秋と少しずつ形づくってきた「自分」のあかりを灯すとき。つながり合った仲間たちと、互いの熱量で照らし合おう。そんな色とりどりのあかりが輝き溶け合うようなカリキュラムを一緒にデザインしていきましょう。
A program for the year
こどもたちの心の季節を捉え、「ねらい」から見通しをもって援助・指導を行います。
槇 英子+馬場千晶+秋山道広
TEXT BY MAKI HIDEKO/淑徳大学 教授(P10-11),
BABA CHIAKI /昭和学院短期大学 助教(P12-13,16,18),
AKIYAMA MICHIHIRO/芦屋市立打出浜小学校 教諭(P14-15,17-18)
カリキュラム・デザインの手がかりとして、表現の起点を 材料・環境から、 イメージ・思いから、 テーマや目的からの3つに分け、育む資質や興味関心への配慮をしやすくしました。アイコンの色で、平面(ピンク)・立体(青)・混合(緑)を示し、主なねらいについては、 発想(感性)、 工夫(創造性)、 かかわりの3つの記号で示しました。
…続きは本誌で