美育文化ポケット 第32号 発刊しました。

第32号 2021 Winter

目次


1 あわいにひそむもの 木村恵美

2 special feature
特別企画
人生で 初めてのアートは 砂場で生まれる
【対談】知っているようで知らない、
「砂場」で起きていること 笠間浩幸×槇 英子
砂LOVEな人たち① 笠間浩幸
砂LOVEな人たち② 宗形潤子

10 アート in SPACE 特別編
福島県・福島大学附属小学校の低学年広場
宗形潤子

curriculum design
カリキュラム・デザイン⑳
特集粘土と自然
ふれる・かんじる 12
槇 英子+馬場千晶+秋山道広

20 curriculum design
こどもと先生のおどうぐばこ

22 pocket interview
鈴木 純さん
植物観察家・植物生態写真家

29 art in life
0・1・2歳の見ている世界 

30 連載 Nature Arts in LIFE④
樹とつながる 磯部錦司

32 連載 さくらぐみドキュメンテーション冬
「やりたいことはなんだってやってみる!
牛頭(ごず)さん・峰さんと炭づくり」
甲田美香

34 practice 実践ポケット【保育園】
ヨモギ染め
身近な素材を使って五感で感じる
石川晶子

36 【小学校】
く~ねくね、針金から生まれた形
中條範子

38 【児童養護施設】
児童養護施設におけるアートの活用
こまちだたまお

40 exploration in to the art of infants
連載 幼児造形の森⑯
聴覚教具「雑音筒」 水島尚喜

41 word for children, word for art
連載 こどものための、アートのための言葉⑯
「きれい」 佐藤賢司

42 drawing&painting こどもの絵を聴く

42【 幼児の部】 照沼晃子

43 【小学生の部】 岡 照幸

44 Q&A
連載 こどもが育つ造形Q&A
黄瀬重義+大櫃重剛

 

特別企画 人生で 初めてのアートは 砂場で生まれる

 

 こどもたちに愛され続けてきた「砂場」。そこは人生の学び舎であり、やりたいことが湧き出る創造の泉。自由な表現が保障される守られるべき遊びの場。私たちは、そのことを忘れ、いつのまにか管理することばかりに目を向けてはいないでしょうか。
 そこで、「砂場」で起きていることに関心を寄せ、その背景を問い、こどもたちに必要不可欠なだけでなく、年齢を問わず表現の世界にいざなう存在であることを伝えてくれる2人の研究者に、砂への愛を語っていただきました。広がれ「砂LOVE」!

 

P3~…【対談】知っているようで知らない、
   「砂場」で起きていること
P5…… すべては「砂で遊ばない砂遊び」から始まる
P6…… こどもも大人も夢中になる砂の城づくり
P6…… 砂場遊びを一変させる魔法の7つ道具
P7…… 砂LOVEな人たち①笠間浩幸先生
P8…… 砂LOVEな人たち②宗形潤子先生
P8……「ふかふかの砂」ってどんな砂?

 

【対談】知っているようで知らない、「砂場」で起きていること

笠間浩幸×槇 英子
砂LOVEな人たち① 笠間浩幸
砂LOVEな人たち② 宗形潤子

 

「意味のないトントン」からアートが生まれるまで

笠間 こどもの砂遊びを見ていると、2歳くらいからアートの始まりがあると感じています。それは何かというと、「型抜き」なんですね。型抜きはいつから始まるかなと見ていると、1歳5か月くらいから、型に砂を入れだします。ただし、コップに砂を入れたとしても、1、2回くらい入れただけでトントンをするんです。これを、僕はこどもには悪いけれど、「意味のないトントン」と呼んでいます。

槇 ははは。

笠間 本来、砂が山盛りになったものを押し固めるためにトントンする。これが「意味のあるトントン」ですが、1歳5か月くらいだと「意味のないトントン」を一生懸命やるんですよね。なぜこれをするかというと、大人がみんなトントンをやっているんです。

槇 模倣ですね。

笠間 砂型を作るときは、ちょっと湿った砂を型に詰めて、意味のあるトントンをし、相当なスピードで型をひっくり返します。ひっくり返した後にまた容器をトントンとたたいて砂をしっかり落とし、まっすぐに型を持ち上げます。つまり、単に型抜き遊びといっても、いくつかのスモールステップがあるわけです。こどもたちは何度も失敗を繰り返しながら、このステップを5~6か月かけてできるようになっていきます。そして、2歳前後になったこどもたちが、型を持ち上げてうまくできていないとき、どうするかというと、ほとんどがすぐに壊します。足で踏みつけたりさらに容器でたたいたり。大人が驚くほどの壊し方です。これは本人にとってはうまくできなくて許せない、ということなんですね。

槇 なるほどね。

笠間 一方で、壊さずに残すこともあります。その後どうするかというと、その横にまた作り始めます。僕はここで本人が型抜きを残したという時点で、これが彼女彼らのアートの出発だと思うんです。2歳にして、自分が作った作品に対する評価を自分でしている、ということなんですね。

槇 確かに! 自分の表現を見て、自分でその価値を見いだす……この時期のこどものスクリブルに「失敗」はありませんから、砂で作る型抜きが人生の最初の作品かもしれませんね。

笠間 そうなんです。2歳でも、自分のよしあし、満足・不満足があって、失敗は許せないんですよ。それがすごいなと思うし、この自己表現、自己肯定を大事にしてあげたいと思うんです。これが年齢を重ねていくと、周りの大人の目や表情など、自己評価の判断基準が自分からだんだん外の世界になり、最終的にはそれが点数化されていきますから。

…続きは本誌で


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