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2013 5月号

特集 目醒めよ!身体/共感覚
Focus on: Wake up! Body/Synesthesia

音楽家、坂本龍一は、ある対談で、18世紀の絵画『燕子花図屏風』(尾形光琳作)に音楽を感じる、と語っています。また、過去には、モンドリアンの大作ブロードウェイ・ブギウギに触発された曲を発表しており、さらには、メディア・アーティストとのコラボレーションにおいて、聴覚/視覚とオブジェの交錯空間=サウンドアートを創出することにも熱心です。

カンディンスキーやドビュッシーの例によるまでもなく、アートと音楽は、相思相愛の関係にある場合が あります。このような共感覚的な呼応は、美術と音楽という、それぞれのジャンルに収斂することなく、 様々な展開をし、今日存在しています。

ジャンルを横断し出入する動向は、グローバリゼーションや多文化主義等を背景とした時代精神に基き、さらにはポップ、アニメ、映画などの文化状況とも通底していると言えるでしょう。一方、小さな子どもたちは、感覚が分断される以前の共感覚に優れています。未分化な子どもたちは、諸感覚を協応させながら、成長していきます。さらに、我々の日常生活も、視る、聴く、触るなどの明確には分断できない五感の地平上に成り立っています。腑分け、言分けされる以前のささやかな感覚の所在は、つい忘れ去られてしまいますが、アートの活動は、そのことに自覚的であるといえるでしょう。

今号においては、従来の「創造性」という生産の論理やシステムに絡め取られない造形美術教育の新たな地平を開示したいと願っています。一つのジャンル形態や感覚に収斂することなく、横断し、共振しあう活動の形態について考えてみます。そのことは、子どもたちの日常の中での創造性の水脈に繋がるかもしれません。そして、その先に、教科の形として何が見えてくるでしょうか。

The musician, Ryuichi Sakamoto, once said in an interview that he could feel music in the 18th century painting Iris Laevigata by Korin Ogata. Also, Sakamoto produced a song influenced by Piet Monrian’s major work “Broadway Boogie Woogie.” Furthermore, he is passionate about creating “sound art” which combines the senses of hearing and sight through collaborations with media artists.

It is often the case that art and music have a relationship of mutual love as in the examples of Kandinsky and Debussy. Today there exists this kind of synesthetic concord not simply unifying these genres of art and music, but developing in various ways.
The coming and going movement at the intersection of these genres is based in the sprit of the age against the backdrop of globalization and multiculturalism. Moreover, it is connected with the culture of pop, animation, film, and so on.

Meanwhile, children excel at synesthesia before sense becomes segmented. Unspecialized children grow up with their senses working in concert.

Our daily life consists of the five senses - such as seeing, hearing, and touch - which cannot precisely be divided. The place where simple sense not yet deconstructed and reduced resides has been buried, but the activity of art can be said to make us aware of it again.

In this issue, we wish to reveal a new basis for art education which cannot be disentangled from the logic or system of conventional “creative” production. We try to consider forms of activity which are not amalgamated into one genre or sense, but resonate against each other. Those forms can perhaps be connected with children’s reservoir of creativity in everyday life. After that what might we see in art education?

5月号 美育インタビュー1

青山学院大学総合文化政策学部教授 鳥越けい子さん
音は見えないので、目の前にあるものに縛られることが少なくなる。そのため、音を感じようとすると、例えば地下に埋もれているものとか、遥かかなたの宇宙のこと、あるいは、過去の出来事や未来のことなどに、思いを馳せるようになります。生活や環境のデザインにおいても同様に、実際に今あるものだけを対象にすべきではありません。風土や歴史のなかで育まれてきたものを取り込んでいくことが必要です。一方、「音」を単に音楽教育という視点だけで見てしまうと、如何に演奏するかとか、曲を鑑賞をするかということに終始して、総合的な感覚を生かした活動にはならないことがあります。…続きは本誌で

5月号 美育インタビュー2

大正大学教授 シャウマン ヴェルナーさん
日本には香道というものがあります。香道によって嗅覚は芸術的な感覚を必要とする文化にまで高められています。ヨーロッパでは嗅覚に関わっている専門家の代表は、香水を調合するパフューマーですが、これはあくまでも職人であって、高度な技術を身につけているとしても、芸術家のような独創的な感覚を要求される職業ではありません。けれどもその一方、ヨーロッパにはワインの香りを言い当てることが、ある種の教養のように見なされています。このため、ワインの味と香りを表すための、多様な言葉の表現が発達しました。…続きは本誌で

目次

特集 目覚めよ!身体/共感覚

BIIKU INTERVIEW
6  PART1 音の風景 鳥越 けい子さん
10  PART2 香りの風景 シャウマン ヴェルナーさん

STUDIO VISIT アトリエ探訪
14  PART 1 松本秋則さん 取材: 伊部 玉紀
16  PART 2 金沢健一さん 取材: 塙 萌衣

特集 目覚めよ!身体/共感覚
18  ちょっと不思議で、ユニークなワークショップあれこれ 郷 泰典
22  アートと音楽の境界線を飛び越えて 白濱 恵里子
26  拡大する身体、図工の時間ヨリ 宮内 愛
28  タカゴダファミリア 大畑 祐之
30  私のある指導計画とアートの歩み 堀川 紀夫

連 載
32  図説 子どもART学 第12回 共感覚-身体から、はじまる 辻 政博

34  世界児童画展ギャラリー

連 載
36  授業ライブ 第5回  和モダンランプシェードをつくろう〈3年生〉
東京・武蔵野市立第六中学校 中村 みどり 取材: 伊部 玉紀

授業研究

38  幼児 遊戯三昧 嶋本 弘道

40  小学校低学年 一つ一つのまるが意味をもち、まるの物語が始まる。 山本 真司

42  小学校中学年 わたしの思い、もの、色、形、見つけた 眞間 秀子

44  小学校高学年 互いのよさを生かして 「コラボっちゃお!」 大塚 智大

46  中学校 神岡 こどものまなざし展~こどもたちの思いと地域の未来~ 田中 真二郎

新連載
48  PHILOSOPHY OF SUBJECT MATTER
「題材原論」[共通事項]への理解を深めるために
新連載開始にあたって 水島 尚喜

50  美育ニュース

56  東日本大震災と美術教育 大地震、津波、子どもたちが語る心の記憶

*「連載 <美術/教育>の扉をひらく」は、執筆者の都合により休載しました。




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