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2005 1月号

特集 やっぱり、子どもの絵!

図工・美術教育の授業時間数の削減や、子どもをめぐる様々な環境の変化により、子どもがじっくり絵を描く機会とその時間はますます減少しています。

戦後の美術教育の出発は「児童画の発見」にあったと思われます。以来、美術教育の中心には、常に絵画の指導があり、私たちは子どもの絵から、多くの魅力を発見し、それを子どもの世界を理解する手だてともしてきました。このため、子どもの絵は、ときには様々な解釈に晒されて、また、あるべき子ども像の反映として過剰な指導の対象となった面もあります。しかし、それらの多少の弊害を差し引いたとしても、子どもたちが、夢や自分の思いを表現する手段としての絵画は大きな意味と価値を持ち続けてきました。

しかし、その一方で、気づいてみれば、写真や印刷技術の発達によって、アートシーンの中では絵画の相対的地盤沈下が指摘されており、すでに「美術といえば絵画」という図式は通用しにくくなっています。子どもの表現においても、かつては子どもたちの生活に密着していた絵画の表現は、彼らにとってオールドメディアになりつつあるのかもしれません。当然、図工・美術においても、絵画だけによって、子どもの世界を解明することは困難になっています。

他方、CGの登場によって、従来の線描は完璧に漂白され、意味と関係性のみがグリッド上に露出するという事態が生じています。ここにおいては、線描の個性や感情は完全に脱色され、表現における個性の意味は見えにくくなっています。
けれども、そうであればなおのこと、タッチやストロークやテクスチュアといった、従来の子どもの絵が持っていた造形要素の意味が再浮上する可能性もあります。

今日、絵画に求められているもうひとつの意味は内面への旅ということでしょう。高度化した情報社会にあって、誰もが本来の自分を探求しているという状況があります。子どもの絵に求められているものも同様でしょう。そこでは、あるべき子ども像ではなく、ありのままの子どもの姿に出会える可能性があります。これらの意味で、今ひとたび、子どもの絵の教育を構築することが切実に求められていると考えます。

そこでこの号では、それらの問題について、実践の中から考えてみたいと思います。



1月号美育インタビュー

色彩研究家 末永 蒼生さん
  自分でも運命的だと思っているのは、父が画家だったことです。ですから物心がつ いたときから、アトリエで絵を描いている父の姿を見て育ったことになります。

  父は「好きなように描けばいいんだよ」という感じで、私には自由に絵を描かせてくれていました。このため学校で課題を与えられて絵を描くことにはどこか抵抗があって、図工の時間はあまり楽しめなかった覚えがあります。でも、担任の先生はとても絵が好きな人で、休みの日にもスケッチに誘ってくれたりして、私の絵をよく見てくださいました。これも自分にとっては恵まれたことだと思います。…続きは本誌で

 

表紙:
第34回世界児童画展
海外の部・特別金賞受賞作品
「寝袋を描いている私」
サマナー・シモンズ
アメリカ合衆国 6歳女

表紙

裏表紙:
第34回世界児童画展
国内の部・読売新聞社賞受賞作品
「たのしいいちごつみ」
藤本 莉奈
栃木・栃木市立国府南小学校1年

裏表紙

 

目次

特集:やっぱり、子どもの絵!

美育インタビュー 色彩研究家 末永 蒼生さん…7

美術教育における「絵画」の再生…柳沼 宏寿…13

「絵画/Kaiga」とは何か
~現代の絵画から子どもの●と○との 関わりを探る~…渡邊 晃一…20

絵画表現の意味を問う
額づくりの実践を通して…五十嵐幸男…26

子どもたちが探る心の宇宙(ミクロコスモス)…五十嵐昭日子…30

第8回
図工だいすき子ども美術展
東京児童幼画堂

鈴石弘之 + 麻佐知子 + 池田操 + 伊藤貴光 + 内野務 + 大畑祐之 + 岡田京子 + 加藤啓 + 加藤幸子 + 神田千恵子 + 高村弘志 + 柴P裕 + 鈴木陽子 + 楚良浄 + 高橋香苗 + 滝澤由紀子 + 瀧田節子 + 田中明美 + 玉置一仁 + 辻政博 + 時任勝 + 永井和貴 + 中村夏実 + 中村隆介 + 庖刀由利子 + 堀口あや子 + 南育子 + 餅和子 + 山口眞生 + 横内克之 + 鷲尾礼子…36

新連載 子どもの育ちと表現
―絵画表現に立ち現れる6年間のいのちの軌跡―
第1回 F君…鈴石 弘之…44

熊本文庫主要文献解題 色彩教育
池田真理子 + 梅澤啓一 + 太田昭雄 + 大橋功 + 小林修 + 後藤雅宣 + 佐藤完兒郎 + 新関伸也 + 藤田睦也 + 槙英子 + 山本和男…50

授業研究 佐賀県

幼児   にじいろのさかなを作って遊ぼう…黒木 洋子…60

小学校低学年  がたで あそぼう!…熊本 英俊…62

小学校中学年  自然の美しさをみつめて…杉原 世紀…64

小学校高学年  濃淡の美しさ「水墨画の鑑賞」…伊藤 進…66

中学校   町を飾る、学校を彩る…古川 昇平…68

連載 高校フォーラム 第24回
敢えて「二足の草鞋」を履きながら…北島 治樹…72

BOOKS 新刊紹介
『美と教育のポエジアⅡ』…谷川 晃一…73

BOOKS 新刊紹介
『誰が源氏物語絵巻を描いたのか』…金田 卓也…73

連載 幼児のひろば 第4回

山梨・甲斐市・ かおり幼稚園  鮎川 庄司…6、74

NEWS  美育ニュース…75

*Computer Nowは休みました。




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